犯人推理ノベル「消火栓」

7話 プライベートタイム!

エピソードの総文字数=2,808文字

部屋に入ると、海老原は自分のベッドの上で、ワープロを打っていた。
海老原、なにやってんだ?
僕が急にやって来たからなのか、海老原は慌ててワープロをとじてフロッピーディスクを抜き取った。
弘樹か。おどかすなよ
そのワープロ、海老原のか?
ああ、これで日記をつけてるんだ・・・
そう言い終わると、海老原はワープロをベッドの下の引き出しにしまい込んだ。
ハハハ。確かに日記は人に見られたくないもんな
それより、弘樹、何か用があったんだろ?
いや、暇だからちょっと遊びに来ただけだよ
僕はベッドに腰掛けながら言った。

外を見ると、外灯のランプが切れかかって
いるらしくチカチカと点滅を繰り返していた。
合宿って、練習の時は早く帰りたいなんて思うけど、いざ寮に帰ると暇だな
僕は腕を伸ばし、あくびをしながら言った。

海老原が僕の腕時計を見て、
その腕時計、いつ買ったんだ?
俺もそれ、ほしかったんだ
と、興味しんしんに言う。
僕は上げた手をそのままにして、腕時計を見た。
あぁこれ?入学式の時に親戚に買ってもらったんだ
親戚、か・・・ ちょっと見せてくれ


僕は腕時計を外すと、海老原に渡した。
海老原って、時計とか好きなの?
ああ、けっこう集めてるけど、高いからな、時計は
そう言いながら、海老原はピッピッと、ボタンを押してみる。
僕はベッドにねっころがって、天井を見上げた。
海老原、今日何日だっけ?
8月1日
海老原は腕時計のデジタル表示を見て答える。
僕は、ふと、あることを思い出した。
そういや、ちょうど1ヶ月後、進路相談の3者面談があるよな。

めんどくせーなぁ。海老原の親って、面談に来るか?
この学校は普通の学校と違って片道2時間もかかる。
まだ2年生だし、面倒くさがって、やって来ない親は結構いるはずだ。
いや、来るわけない
海老原はキッパリと答える。
しかも、少しムッとした言い方だった。
え、どうして・・・?
僕は海老原の反応に驚いて聞き返した。
あ、いや。ここって家から遠いだろ。
だから、別に来なくていいよって、
俺が電話したんだ。
だから来ないと思うよ、きっと
海老原は無理に笑って、僕に腕時計を返す。

と、ドアの方から声がした。
海老原、お前ワープロ持ってたよな。
インクリボン貸してくれないか?
武藤だった。
お、弘樹もいたのか
武藤はメガネ越しの目を細くして僕を見た。

よっぽど視力が悪いのかメガネをかけても見えづらいらしい。
インクリボン? あるけど、俺のワープロのインクリボンと武藤が持ってるワープロとは 互換性ないと思うけどな
そう言って、海老原はワープロをベッドの下から取り出し、インクリボンを外してみせた。
武藤のワープロのインクリボンもこの形か?
インクリボンとは熱転写プリンタで使用されるテープ状のインクカートリッジのことだ。
熱転写プリンタでは、リボンをヘッドで加熱して用紙にインクを転写する。

熱転写プリンタの場合は基本的に一回しか使えないので、インクリボンはすぐに消費されてしまう。
武藤はメガネに手を当てて、じっと、海老原が持つそのインクリボンを見つめ、
俺のとは全然違うな・・・
と、つぶやくように言った。
武藤、勉強の調子はどうなんだ?
武藤は、東京の医大を目指しており、いつも夜中の2時頃まで自室で勉強している。
まあ、ぼちぼちって所かな
今日も遅くまでやるの?
僕は天井を見つめたままの状態で聞いた。
いや、今日は疲れたから早めに寝ようと思う。
さて、そろそろ部屋に戻ってきりの良いところまで勉強の続きするよ。
邪魔したな
頑張れよ
海老原が、ベッドに腰掛けたまま、武藤の足を軽くたたいた。

僕も、そろそろ部屋を出ようと思い、ベッドから立ち上がった。
じゃあな、海老原。俺も行くよ
ああ
つづいて、僕はプーやんの部屋に行くことにした。
よ、プーやん。何やってるんだ?
中を覗くとプーやんはゲームに熱中していた。



スナック菓子をボリボリとむさぼり食っているので、コントローラーは油でベトベトだ。


プーやんはゲームをやるために、わざわざ小さな液晶テレビを持ってきている。

先生に見つかったら没収されるので、タンスの後ろの隙間にこっそりと隠すようにやっているのだ。

僕は後ろからテレビ画面をのぞき込んだ。
しかし、何も映っていない。
プーやん、おいっ!
僕は大きな声を出した。
プーやんはヘッドホンを耳からずらして、
なんだよ、うるさいな。フン、弘樹か。
今ゲームやってるんだから、邪魔するなよ!
と、不機嫌に答え、再びゲームに熱中していった。

ゲームったって、画面は真っ暗じゃないか。
お前まさかそのゲームってリアルサウン・・・
う、うるさいよ! 風を感じて何が悪い!
なんか用があるなら早く言え!
プーやんがいつになく激しい口調で怒鳴った。
いや、別に用はないよ。暇だったからさ。
そんなに怒るなって
僕がなだめると、プーやんは何も言わずに、再びヘッドホンを耳にはめた。

本当にゲーム好きな奴だな。

僕は部屋をぐるっと見回した。
食べたお菓子の袋や、ジュースの空き缶がそこらじゅうに転がっており、まったく掃除をしてない
ようだ。

壁にはアニメのポスターが張ってあり、それも破れかけていた。
ベッドの下には、ビデオやゲームを接続するコードの束が、何かの生き物のように床を這っている。

洗濯物も他人のベッドの上に山積みされてあり、夏休みに入る前からこうだったのだろうか?

だらしのない奴だなぁ・・・
ふと、プーやんのタンスに目がいく。

タンスのドアは、堂々と開いていた。

中にはアニメグッズがぎっしり。
ビデオテープ、フィギュア、ゲームソフト、
保存用のゲームソフト、ゲーム雑誌、
声優のアルバムCD、萌えキャラがプリント
された枕カバー、ギャルゲーのパッケージ、
販促グッズ、景品のクリアファイル、
テレホンカード、何かのキャラのぬいぐるみ、
マグカップ、大量のラノベ、等身大のポスター
・・・

そして、大量の単3電池。

単3電池!?

何でこんなに電池が置いてあるんだ?
おい、プーやん、この電池はなんだよ?
僕は電池を手に取って、聞いた。
プーやんはうんざりした顔をした。
本当にうるさい奴だ。電池?
あぁ、液晶テレビの電池だよ。
これ、アダプターがないから電池で動かしてるんだ
と、ジュースを一口飲んで、にらみつける。
こんなにあるなら今度くれよ
僕は、懐中電灯の電池が切れかかっていることを思い出して言った。
1本、100円で売ってやるよ
プーやんは悪い顔をして言った。
1本、100円? そりゃ高すぎるだろ、
プーやん、ぼったくりだ
うるさい! ゲームの邪魔だから出ていってくれ!
プーやんはついにキレて、雑誌を投げつけてきた。
わっ!
僕はそれをよけると、早々に部屋を後にした。
僕は若宮の部屋へ向かった。

若宮の部屋のドアの前に来る。
しかし、どういうわけか部屋は暗い。

おかしいな、と思った瞬間、足の裏にザラザラした感触を感じた。
下を見ると、足元に妙な白い、砂のようなものが山のようにつまれてある。

よく見ると、それは塩だった。
つづく

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