黄昏のクレイドリア

13-2

エピソードの総文字数=920文字

<寂静の遺跡が伺える茂みにて>
(ひゅ~、マジか!)
(この距離で躱すかね、あのガキ。
 いい勘してやがるなぁ。)
(ま~でも掠ったから
 ガキは無力化できたはずだ。
 隙を見てとんずらしたいが、
 あとはカノンとイーリアスがどう出るか……。)
――――、
おーっと
男は咄嗟に身体を転がして
イーリアスの短刀の一撃を躱すと、
腕を互いに抑えあって組合いながら、
にやりと笑った。
初めましてぇ、イーリアス。
オレには慈悲の鎌の一刀は
無しかい?
…………。
てっきりおたくも
あの中で雨宿りとしゃれ込んでる
と思ったら、一人だけ外にいたのかぁ?
相変わらず孤高なんだねぇ。
……どこの差し金だ
殺し屋がそれを言ったら
お終いだろぉ?

……で、
いつまでオレと
組み合ってるつもりなんだ?
!!
男が身体を捻り、
イーリアスの足を掬って彼の体勢を崩すと、
するりと蛇のように戒めから抜け出した。
くっ、
そらっ!
(短刀による一振りか、

 躱せる――)
(ん…?)
読み通り、イーリアスは
男から閃かれた刃を躱したはずが、
どういうわけか、
左腕に違和感を感じた。
(刃が伸びた……?
 仕込み武器だったか)
徐に違和感の生じた左腕へ右手をあてると、
在るはずの物が無いことに気がつく。

常に胸部で輪を作り、
イーリアスの魔力の器を
制御していた魔巧具がなかった。
…………。
ひひっ、
魔術師のアドバンテージは
ガンガン削ってかないとなぁ。
貴様……!!
……はぁ~~~~、
睨みつけてくるイーリアスの
鋭い視線をよそに、
男は大げさにため息をついて見せた。
がっかりだぜ、イーリアス。
冷血で冷徹な、
暗殺者って聞いてたのになぁ
さっきの不意打ちだって、
お得意の鎌を使ってりゃ
一発で殺れてただろうに。
…………。
お互い、不意打ちの初撃で
殺り損なってるからなぁ、
人のことを言えた
義理じゃあないんだが
短刀を手の上で回しながら、
男は腰のホルダーに得物を納めた。
弱点、できちまったか?
は?
……ま、今日のところは
退いておくからよ、
精々自分たちの心配をしておくことだな。
言うが否か、男は手を掲げて
別れのジェスチャーをすると、
木々に紛れて走り去っていった。
…………。
男の姿が見えなくなると、
イーリアスは足元に落ちた
魔巧具を拾い上げ、小さく独りごちる。
……まずいな、これは。

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