神と大統領と弾道ミサイル(仮)

神のインタビュー

エピソードの総文字数=8,346文字

 大統領官邸1Fの大広間。

 カメラを向けられた天馬は、ライザを前にして答え続けていた。開始からすでに30分が経過していたが、互いの現状認識に関する確認を繰り返しているようなインタビューだ。英語での受け答えはラフでいい。尊敬語や謙譲語を駆使する必要もなく、ストレートな議論ができる。

 部屋には5人。CNM側からはインタビュアーとしてライザと、カメラマンと音声だ。アスタリア側からは大統領である天馬と、大広間のドアの前には護衛としてエリカ。

――では大統領は、この内戦に勝てると考えているの?
ふむ、当然だ。オーレス共和国の治世は乱れている。この俺が統一せねば、いったい誰が統一するというのだ?
アメリカが死力を尽くしたって、とてもオーレスを統合することはできなかったわ。目先でアメリカに従う人は幾らでもいた。でも本音は、みんな誰も従おうなんて考えていないのよ。
アメリカ人らしい驕りだな。現行のオーレス共和国政府も、アメリカが無理やり作り上げて支えているものだろう。アメリカが完全に撤兵した暁には、すべての苦労は水泡に帰すに違いない。
そう、かもしれないわね……。
アメリカが中央アジアや中東に大規模な軍を派遣して、その戦費は38兆円にも達する。すべてが無駄になるわけだ。

……いや、軍の周囲にまとわりつく民間企業に数十兆の国費が移動しただけだから、アメリカ政府がバカを見ただけであって、民間や兵士はその分だけ潤っているのだろう。壮大無比な戦争経済ショーを無償で披露してくれるアメリカという国は実に面白い。

でも、大統領がこの内戦に勝つためには首都の制圧が必要よね? まだアメリカは完全に撤兵を決めかねていて、首都に最小限の兵を置いている状態よ。アスタリア軍が仮に首都をうかがうような事態になれば、アメリカ軍とも対峙することになりかねないわ。

その覚悟は、大統領におありなの?

逆だ。

アメリカ軍のほうが、この俺と対峙する覚悟があるのかと問いたい。小1時間問い詰めたい。アメリカが俺との対決をするつもりがあるなら、アメリカは撤兵を模索することもできなくなり、泥沼に完全に沈み込むことになるぞ。さらに数十兆もの国費を、このオーレスの地で溶かすつもりか?

 天馬は意図して煽りを入れた。

 天馬の決断は、しょせん天馬一人が背負えばいいことだ。だがアメリカの決断ともなれば、アメリカ人3億2000万人を背負う選択となる。チキンレースを互いに行えば、アメリカには、天馬への勝ちようがないのである。そのことを、チキンレースに挑む覚悟を持つ天馬は誰よりも理解していた。ならばこそ国際政治ゲームに自分が参加すれば、押しの一手が幸運を呼び込んでくれるであろう。

……それはアメリカ政府が決めること。私たちの役目は報道に徹すること。アメリカ軍への攻撃に国民が敏感に反応すれば、アメリカは増派の決断にも踏み切る可能性はあるように思えるわ。
報道に徹すると主張する割には、ずいぶん対等に議論しているような印象も受けるのだがな?

 天馬にとってインタビューを受けるのは初めてだったが、その天馬にはやや違和感あるインタビューに思えていた。インタビューとは、一方が一方に質問をぶつけるものではないのか。しかしライザは、天馬に向けて意見をぶつけてきさえする。ここぞというときには、天馬の考えを誘導するような言葉まで口にするように感じていた。そして都合が悪くなると「報道に徹する」として逃げを打つ。

 たしかに動画配信サイトでチェックしたライザのインタビューは、どれも議論をしている風であったが、とりわけ天馬に対してはその姿勢が前のめりになっているように感じられた。CNMの特派員プロフィールページに掲載されていた情報によると、まだ24歳だという。その割には老練だ。メディアのインタビュアーだと侮ってはならない掴みどころのなさがあった。

大統領が生物化学兵器を使用したという噂があるわ。私たちには真相を確かめようがないけれど、オーレス共和国軍の兵士の幾人かがカメラの前で証言までしてくれている。実際のところ、アスタリアは生物化学兵器を使用したの?
帝国が生物化学兵器を所有していると誤認されることには一定の軍事的・政治的メリットがある。そして所有していないと軽んじられることには軍事的デメリットが大きく、一方で国際的視野に立てば政治的メリットもあるであろう。なにより帝国は内戦中だ。国際社会より、まずは軍事的威光を重視すべき頃合いだとこの俺は判断している。
誤認される……という言葉を使ったということは、本当は所有していない、という判断でいいのよね?
そう思いたいなら思いたまえ。このような曖昧な可能性のなかに我が言霊を封じることこそが、帝国にとっての最大のメリットだと確信している。
仮にアスタリアに生物化学兵器工場が存在したとして……大統領はそのような兵器を使うほど軽挙妄動するような人物ではないと思えたわ。
同じ言葉の繰り返しになるが、そう思いたければ思え、それが俺の答えだ。

だが……フフフ、それはどうかな? 真の統治者たらんとする者は、民衆に神罰を下すことすら厭わないであろう。

…………。

 ライザはわずかに言葉を詰まらせた。どう応じていいかわからないといった表情だった。

 体制を立て直したライザが、意味深に聞いてくる。

……根本的なことをお聞きしたいけれど……ミスター不動は何者なの?
天馬でいい。
ならば天馬、あなたはどこから来たの?
日本だ。
日本人、よね?
アスタリア帝国人だ。
じゃあ日本からどういう経緯でこんな場所に?
こんなとは失敬な。日本ごとき極東の老衰国家より、アスタリアのほうが遥かに若々しく高度な文明を有している。なぜなら俺がここにいるからだ。
私の言葉が悪かったことは誤るわ。天馬がどういう経緯でここまでやってきたか、教えてくれないかしら?
この俺は、権力者として君臨できる場所があるのを待っていた。ここに、その場所があった。俺が降臨するのは当然だ。
でも、そこには過程があるはずよね?
宇宙のあらゆる事象には過程がある。
実は日本で、警視庁に、ある行方不明届が出ているのよね。行方不明届なんて毎日のように数多の数がある。だから普通なら大して注目なんてされるわけじゃないんだけど……その男の名は、不動天馬。IQ測定不能とされる知能の持ち主であることを、ひょんな経緯から各種の機関が突き止めた――
 ライザはすでにかなりの情報の裏付けを取ったうえで取材にやってきたようだった。やはり単に視聴率稼ぎのために仕事として割り切ってやっている特派員ではないようだ。
……ククク、世界が俺を見出すのは当然だった。数々の機関から俺はしきりに三顧の礼で誘われたが――
大統領、そろそろ政務のお時間かと。

 一瞬、場が沈黙した。エリカの声音には、有無を言わせぬ響きがこもっていたからだ。

 ライザは、今度はそのエリカに話を向ける。

マリシェヴァ大佐。

どこで戦闘を覚えたの?

なんか急に私に質問を向けてくるけれど……あなたたちだって軍人よね?
どうして私たちが軍人だなんて思ったのかしら。
ちょっと試してみたのよ。単なるブラフ。そしてあなた方は見事に、微塵も動じた素振りを見せなかった。ううん、むしろ、あなた方が微動だにせず、表情ひとつ動かさず、完全にポーカーフェイスだからこそ確信したわ。
 そこまで言ったエリカは、取材クルーの3人それぞれに視線を走らせながら淡々と口にする。
……CIA?
 3人はポーカーフェイスのままだったが、誰も口を開かなかった。この状況においては、エリカの次の言葉を待ったほうが賢明だと判断しているのだろう。
ライザ・フローレンス――CNMの本物の特派員であることは確認済み。実際にCNMの主要特派員として、各国に飛んで仕事をしている。だけどその仕事の数々が、CIAは無関係だったなんて証拠はない。
そんな悪魔の証明を吹っ掛けられても困るわ。
私たちは裁判官じゃないの。1%の疑惑は、100%の真実を物語る。このインタビューはとんだ茶番よ。

 エリカは静かに、懐から拳銃を取り出してライザへと向けた。

 しかしライザもまるで動じず、余裕の笑みで応じる。

……私も予想させてもらおうかしら。FSB?
そのカメラと音声は回収させてもらう。それがここを無事に出る条件よ。
私たちが無事に戻らなかったらアメリカが黙っていないわ。無辜のアメリカ人取材クルーを殺したなんてことになれば、世論は沸騰するでしょうね。後先考えず行動するのはスパイ失格よ。
おかしなことを言うのね。仮に私がロシアの手先だとしたら……ロシアにとってどんな脚本がベストシナリオになるかしら?
…………。
そうよ、アメリカをオーレスの泥沼に引きずり込むこと。ならば、私があなたたち3人を、ここで葬り去るのは悪い選択じゃないの。ロシアにとってはね。アスタリアにとっては大変なことになるけれど。
待てエリカ。

互いにカードを晒し合うなら、むしろ建設的な話ができるチャンスになる。かえって都合がいい。

…………。
 エリカは拳銃をライザに構えたまま動かず、押し黙った。
銃を収めろ。

 事務的に天馬が言うと、エリカは静かに銃を懐に収めた。

 天馬がライザに向き直る。

ライザはここに調査にやってきたというわけだな?
CNM特派員の仕事は本物。だけど、CIAであることも本当よ。

【CNMカメラマン】

ライザ!

 男の一人が正すように声を上げたが、ライザは片手を上げるだけで男を制した。自分に任せろと合図したのだろう。

 CNMとアメリカの現政権は仲が悪いはずだが、かといってCNMと政権が結託していないという証明にはならない。かつまた、CIAが各所の大手メディアに独自の要員を置いているのも不自然なことではなかった。いや、CNMの政権への敵対的な姿勢が、かえって裏側での結託を覆い隠してくれるというものであろう。

良いインタビューが取れれば、CNMで報道される可能性もあった。だけど多くのアメリカ人はオーレスのことに今やほとんど無関心だし、ましてアスタリアとの内戦なんて誰も知りもしないわ。だから報道としての価値は高くない。お察しのように、私がここに来たのはアスタリアの動向を探るため。その目的は、要するにアメリカ軍の撤退を睨んでの戦略を立案するため。
アメリカ軍のスムーズな撤退のために、アスタリアの動向はもはや無視できなくなったというわけか。
ほかの内戦や民族にはほとんどアメリカ戦略立案者は関心を持っていない。そう、アスタリア人以外にはね。
フッ、俺がここに来てわずかな期間で、いきなり国際政治の表舞台に引き上げられてしまったというわけだな。当然だ。天才だけに仕方ない。
私たちは敵対すべきじゃないと思う。少なくともアメリカ側はそれを望んでいるし、今日ここに取材しに訪問して、天馬とは大人の議論を成立させることができる相手だと私は判断したわ。
 ライザはエリカをチラと見やって続ける。
……だけど、そっちのFSBのエージェントは、そうはいかないのよね?
……。
問題の核心は……天馬がロシアの思惑に沿って忠実に動いているのか、それとも独自の意思がある程度は優先されるのか……。要するに、ロシアの犬かどうかってことを知りたい。
神が誰かに支配されるはずがない。

俺は俺の意思でのみ行動する。

 ライザは再びエリカに視線を走らせ、注意深く口にする。
ロシアとは手を切ることを勧める。世界の秩序を転覆させようと企む、悪魔のような国なのよ。
私は細かいことに関心がないタチだけど、さすがに聞き捨てならないわね。オーレスに突然大挙して押し寄せ、大量の爆弾を投下し、兵器の実験場として活用していた国が悪魔でないとでも?
天馬を拉致したのはまさしくロシアらしいわ。野蛮人じゃないの。アメリカはもっと紳士的よ。
ロシアはたぶん、ちょっと素直なだけなのよ。自分たちには、アメリカみたいな本物の腹黒さが足りないんじゃないかって思ってるわ。
 ライザが言い返そうとしたようだが、その前に天馬が場を制する。
ロシアの意思で行動するつもりなど毛頭ないが、ロシアを切る必要性もない。アスタリア帝国は目下、ロシアと敵対関係にあるわけでも、ロシアを相手に戦争をしているわけでもないのだからな。
包み隠さず言いましょう。

アメリカには、アスタリア人に援助する用意がある。

 ライザは、CIA要員であると露呈したことにすっかり居直っているようだった。
ほう?

それを決める権限が、ライザにあるのか?

決裁権を持っているわけじゃないわ。でも、この件については直接ホワイトハウスに報告を上げている。かなりの程度まで、私の言葉にはホワイトハウスの意思が入っていると思ってくれていい。
 後ろに控えるカメラマン、音声の男2人――確実にライザとチームを組んで情報収集活動を担うCIAの要員だろうが――は表情を動かなさなかった。ライザの言葉通りなのだろう。
ならば俺は、ライザを通してホワイトハウスとも交渉可能ということだな。
大統領は……天馬じゃなく、アメリカ大統領のほうだけど……オーレスの動向に強い関心を持っている。なるべくオーレスに波風を立てず、人員やコストを割かずに安定させたうえで、堂々と撤退したいと考えているの。
 ライザは熱を込めて話を続けてゆく。
少なくとも今のアスタリアはオーレスの内戦にとって台風の目になってしまっているし、アメリカのほうも脅威を感じているということよ。もちろんアメリカがアスタリアに負けるなんて思っているわけじゃないわ。ちょっかいを出されるのが嫌なのよ。下手にこちらに被害でも出れば、本当に撤退できなくなるから。
フフフ、アメリカの弱みをアスタリアが握っていると思えば……なかなか悪い気分でもないな。
でも誤解はしないほうがいい。その気になればアメリカには、首都オーレスに駐在する特殊部隊1000を動かして、天馬を直接亡き者にしてしまうというオプションもある。いわば、大規模な暗殺作戦というわけね。
その作戦に失敗すれば、自分で勝手に泥沼にはまり込んでくるようなものになるぞ。
そんなことは百も承知よ。だけど、オプションの一つとして想定していることは確かな事実。
フッ、それを言い始めれば、この俺にも数多のオプションがあるぞ。今すぐアメリカに向けて宣戦布告に打って出るというオプションすらある。
……援助に話を戻しましょう。経済協力と言い換えてもいい。天馬は、アメリカからの支援を受け入れるべきよ。ロシアのような経済弱国から援助を受けるより、10倍は豊かになれると思うわ。
残念だな。この俺は、金ごときでは決して動かない。興味があるのは、この俺に相応しい権力を渡すかどうかだ。
相応しい権力? たとえばどんな?
逆に提案させてもらおう。アメリカは、今のオーレス共和国政府を切れ。そしてアスタリアにオーレス全土の政権を担わせよ。さすれば我が統治下に、たちどころにオーレス共和国は安定する。
それは……本気の提案なの……?
今までのやり取りで、この俺がありもせぬ妄想を語る人間だとライザは思ったのか?
………………。
どうだ、悪いようにはしてやらんぞ。アメリカが帝国の軍門に屈するのを、この俺は寛大に受け止めてやるとしよう。
お、おかしいわ……。まるでアメリカが天馬に屈したような物言いに聞こえるんだけど……?
俺がホワイトハウスを同志として歓迎してやるということだ。アメリカ大統領は、この俺に感謝することになるだろう。
そうなると問題は、本当にアスタリアが現政府軍にとって代わる力があるかどうかになるわね。組織としては、とうていそれほどの力があるとまでは考えていない……。
 意外なことに、ライザは天馬の提案を真っ向否定まではしなかった。
だが……ライザたちが危険を顧みず、わざわざここを直接探りに来て、統治者の俺に取材を装ってまで会いにまできたのは……CIAが可能性を感じたからなのだろう?
いい読みね。実のところ私たちの内部文章においては、アメリカがオーレスの平定に参戦しないと仮定して、内戦の勝利者がアスタリア人になる可能性を5%と見積もっている。
 わずか5%、されど5%だ。3250万人の人口を誇る国内の内戦において、人口1万人弱のアスタリア勝利を5%と見積もること自体が破格だと言えるだろう。おそらくCIAは、かなりの程度まで天馬のことを買っている。今までのアスタリアの統治方針を見たのか、それとも戦い方を見たのか、あるいは天馬本人のIQや特殊性に賭けたのか……。その判断に至るまでの過程は不明にしろ、CIA分析チームの仕事ぶりは、外から見聞きしていたよりも現実ははるかに優秀だと天馬は判断した。
こうして俺に会ったことで、その可能性はどれほどに増えた?
 天馬の問いかけに、ライザはチラと撮影用カメラを見やって口にする。
正確には、このビデオカメラと音声を持ち帰って、分析チームやAIの全脳を費やして一週間はかかる分析になるけれど……そっちのスパイさんは許してくれないでしょう。
お気遣いありがとう。

 壁を背もたれ替わりにして、腕を組んでいたエリカが応じた。

 ライザは、壁際のエリカに切々と頼み込む。

これを持ち帰らせてもらうために、何か取引できないかしら?
無駄な試みね。
国家は関係なしで、個人的なご相談にも乗れるんだけど?

大丈夫、誰も聞いていないわ。

 相応の人間の間では誰でもわかる、要するにライザは買収を持ち掛けたのだ。
フフ、アメリカの小役人って本当に羨ましい人種よね。そんな大盤振る舞いを許されているんだもの。貧しいロシアスパイの私としては、あなたがたアメリカ人に鉛玉をプレゼントするご相談も可能よ。
 ライザは、同行のCIA要員の男2人を振り返る。
置いていきましょう。このロシアンスパイは本気だから。
 すぐさまカメラマンと音声はうなずき、撮影していたカメラを取り外し、音声機材も一緒にテーブルの上に置いた。そして、そそくさと元居た場所に戻り、カメラケースや荷物をまとめようと試みる。
そのケース類も置いていきなさい。小細工は労さないことね。

 エリカがぴしゃりと言い放った。

 男2人は顔を見合わせ、観念したと言わんばかりに首を振り、機材のケースから身を離した。

 ライザは天馬に向き直り、大きく息を吐いてから口にする。

天馬、あなたの提案、なかなか面白いものだったわ。ホワイトハウスに、きっちり伝達することになりそうね。
エリカを個人的にという名目で、二重スパイに誘ったな? この俺も、ライザを勧誘してもいいんだが?
へえ~!

私、初めてよ、二重スパイを持ち掛けられたことって!

 ライザは男2人に向き直って無邪気に言うと、2人のCIA要員は肩をすくめた。
ねえ天馬。私には、どれほどの財宝を約束してくれるのかしら? 300万ドル? それとも500万ドルくらいは値札を付けてくれるのかしらね? 1000万ドル付けてくれたら今すぐよ。

 どこまで本気かわからないものの、ライザは笑顔でそう言った。

 天馬は生真面目な顔で応じる。

世界のすべてだ。
……………………えっ?
 よほど意表を突かれたのか、ライザは一瞬固まった。
望むなら、世界のすべてをくれてやる。

もしもライザが、アスタリア帝国人になる堅い決意ができたらだ。

……冗談を言ってるわけでも、なさそうね?
ふん。

そっちの2人もだ。考えておくがいい。

 天馬は、黙して控えているだけだった男2人にも目を向けた。

 男の一人がまんざらでもなさそうに笑う。

【CNMカメラマン】

はっは。実に興味深い。

【CNM音声】

景気のいい話だねぇ。アンタみたいな男は嫌いじゃないぜ。

 もう一人のほうの男もそう言ってニヤリとした。

 ここに来て、男2人が初めて口を開いた。表情は楽しげで、天馬のことを本気で気に入ったらしかった。

 エリカが話を切り上げようと口にする。

丁重にヘリまで送り届けてあげましょう、CIAの皆さん?

【CNMカメラマン】

貴重な体験に感謝する。

【CNM音声】

今まで携わってきた諜報で、これほどワクワクさせられる機会に巡り合ったのは初めてだぜ。帝国の発展を待っている。アンタは実に面白い、大統領。

 エリカが無言でドアを開き、こちらに向き直った。CIAの面々に、「早く出ろ」と主張しているのだろう。

 ライザは席を立ち、天馬も続いて立ち上がった。

 大広間をあとにするとき、最後にライザが天馬を振り向いてくる。

あくまで個人の感想だけど……私の答えは80%。アメリカ去りしオーレスに、天馬が君臨する確率よ。
 そしてライザは天馬にウィンクし、投げキッスまでしてきたのだった。

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