黄昏のクレイドリア

5-4

エピソードの総文字数=1,427文字

此処が……
ロージアの門を出て、馬を出せば日の位置も
さほど変わらないであろう程の距離に、件の塔は建っていた。
10階分ほどの高さの塔を観察しつつ、
脇道の茂みに伏せながら、カノンは思案していた。
この塔にどう侵入するか、
そして、もうひとつ――
それで、いつまで
あたしの後を尾けてるわけ
…………。
せいっ
いてっ!?
カノンが手元に落ちていた石ころを茂みに投げこむと、
昨日路地で出会った少年が、頭をさすりながら姿を現した。
痛ッてぇじゃねーかボケ!
一回で出てこないからよ。
……で、何か用?
もし仕返しか何かだったら、
日を改めて――――
ち、ちっげーよ!
オレ様はそんな小っせー器じゃねーっての
ふーん、……悪いけど、
こっちは忙しいから、構ってる暇はないわ。
だーかーら、そうじゃないっつーの。
…ねーちゃん、どーせ
塔にどうやって入ろう~とか企んでんだろ?
まぁ、そんなところだけど
よっしゃ!それならオレを雇えって。
塔の逸話から侵入まで、きっと役に立つはずだぜ?
…いくら?
銀貨3枚!
うーん、1枚なら出す。
うぐ…………わかったよ
少年は銀貨をカノンから受け取ると、
にやりと笑みを浮かべながら、懐にしまいこんだ。
へへっ、まいどあり!
んで、ねーちゃんも塔のカラクリを
知りたくて来たクチか?
? カラクリ?
あり、なんだ、知らねーの?
この供犠の塔……ってのは知ってるよな、
ここはさ、単純に祈るためだけの場所じゃない、
塔自体にシカケがあるってハナシだよ。
月の民が、故郷の月に帰る為に建てた……
アーティファクトだって言われてる。
アーティファクト……。
今じゃ祈りの儀式以外……しかも関係者以外は
入れねーみたいだけどさ、
せっかく足を運んだからには、
ウソかホントか……どんな構造になってるか気になるじゃん?
だからオレの神業でちょちょーっと中を見ようと
…で、もし街の人間にバレたら
あたしを身代わりにする魂胆ってわけね
…………。
(図星か……)
……まぁ、ちょっとそのまま
黙って身を潜めてなさい。
え?
カノンに腕を引っ張られ、言われたとおりに
少年は茂みへ体を伏せた。
すると程なくして、一台の馬車が塔の前までやって来ると、
荷台から複数の人影が立ち上がった。
(あれは……)
少し前にカノンがこらしめた追いはぎ達だった。
一人が御者となにやら口論をしているようだったが、
それが収まると、手に縄をつけられたまま、
ぞろぞろと開かれた塔の中へと入っていく。
彼らが塔へ入ったことを確認すると、
御者は馬車と共に、塔を後にしていった。
はぁ~?どういうことだよ、
なんで罪人が塔に入れられてんだ?
……キナ臭くなってきたわね
……って、おい、どこ行くんだよ?
ロージアに戻るのよ。
単身で突っ込むには準備が足りなすぎる
単身……って、
おい、オレは無視かよ?!
あんたは純粋に、塔の中を見る事が目的だったんでしょ。
だったら悪いことは言わない。
今回は……少なくとも今夜は、塔の事は諦めなさい。
…………。
……話が見えねーけど、
面倒事なのは間違いなさそうだな。
察しがいいわね。だから――
だったら尚更、オレにもう少し銀貨を恵んで、
ねーちゃんの手駒にすればいいと思うけどな。
それは……
おっと、子供だからどうこうってのはナシだぜ。
元々オレも塔に用があったことには変わりねーんだし、
金を貰った以上、仕事はキチンとする。
そうやって生きてきたからな。
…………。
……わかった。
あたしはカノン。あんたは?
オレはセシル。よろしくな!
それじゃーさっさとロージアに戻って、
作戦会議といこうぜ!

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