三題噺のお部屋

榎本レン

エピソードの総文字数=3,447文字

榎本レン
2018/01/11 11:04

rsesaf_rsesaf

いってきます
2018/01/11 11:11
いってらっしゃい
2018/01/11 11:16
いってらっしゃい!
2018/01/11 11:18
にゃー!
2018/01/11 11:19
あの……、いややっぱなんでもない……
2018/01/11 11:21
2018/01/11 11:24
彼は歯切れの悪さを残しながら、私と母、猫のクロちゃんに見送られて玄関から出ていった。
2018/01/11 11:25

rsesaf_rsesaf

 彼が私達の家にきたのは、母が車に跳ねられそうになったところを助けてくれたからだったと思う。

 東京に上京した彼は物価の高さから住む場所に困っていたのだ。そこから、母が他人である彼をいきなり居候させると言い出したときは驚いた。

母はよっぽど彼のことを気に入ったのだろう。 単身赴任している父も彼と電話で話したら良い人だから大丈夫だと言って簡単に許可したし。

2018/01/11 11:31

rsesaf_rsesaf

あの子が、きてもう1年ねぇ

そういえば、クロちゃんを飼い始めたのもあの辺りだったわね。

……それはそうと、冬美ももうすぐ成人するんだからITの就職、頑張りなさい

あ、彼氏とかは、あの子みたいな子が良いわ、お母さん いや、いっそうのことあの子に……

2018/01/11 11:45
もう! あの人とはそんなんじゃないって!
2018/01/11 11:58
次々と畳み掛けられて頭が痛い。

母の悪い癖だ。就職もまだ先だし。最後にいたっては大学が忙しいため、彼氏とか考えている余裕はない。

2018/01/11 12:00

rsesaf_rsesaf

まあ、確かにちょっとカッコいいとは思ったけど…… 
2018/01/11 12:12
*    *    *
2018/01/11 12:16

rsesaf_rsesaf

ただいまー!
2018/01/11 12:19
カチカチカチ……カチカチカチ……

歯車なのか時計なのかわからないけれど、何か擦れるような音が聞こえる……


私は彼を見送った後、大学で講義を受け

、そのままバイト先へ向かい、今家に帰ってきた。

2018/01/11 12:22

rsesaf_rsesaf

冬美、おかえりなさい
2018/01/11 12:28
あれ、クロは?
2018/01/11 12:31
クロはあの子と一緒に二階の部屋に閉じこもってるわよ

何か仕事のことで忙しくて集中したいから、部屋には入らないで欲しいって言ってたわね

2018/01/11 12:34
クロと?
2018/01/11 12:41
仕事から帰った彼はそのまま部屋に行ったらしい。

それにしても、集中したいのならクロは邪魔になると思うのだけれど。私は違和感を感じたが、特に気にすることはなかった。

結局、そのままその日、彼は部屋に閉じこもったままだった。

2018/01/11 12:42

rsesaf_rsesaf

*   *   *
2018/01/11 13:09

rsesaf_rsesaf

——カチカチカチ……カチカチカチ……

音が聞こえる……

ふと、私は目が覚めた。

2018/01/11 13:14

rsesaf_rsesaf

何の音だろう……?
2018/01/11 13:18
就寝したのだが、この音で目が覚めてしまった。 音は二階から聞こえてくる……

私は気になったため、部屋から出て、二階のほうをみた。

——二階の部屋から明かりが漏れている。

彼が閉じこもっている部屋だ。

2018/01/11 13:20

rsesaf_rsesaf

ちょっとだけなら、みていい、よね?
2018/01/11 13:26
私は恐る恐る、二階へ向かった。——カチカチカチ……カチカチカチ……音が大きくなる……

わずかに開いているドアから部屋の様子をみた。

2018/01/11 13:31

rsesaf_rsesaf

彼が床に座っている。膝の上にはクロがいた。

——そのクロの顔は皮膚がめくり上がり、赤い肉が覗かせていた。彼の手には、ナイフ…… そして彼の左目は歯車の形をしていて……

2018/01/11 13:39

rsesaf_rsesaf

えっ?!何これ……

心臓が破裂しそうだった。

私はこれはきっと夢だと思った。だってそうだよ、こんなのありえない、ありえない。現実とはとても思えない。 

私は声を押し殺したが、動揺からドアを前に押してしまい……ドアがギギッと音を立ててしまった。

2018/01/11 13:47

rsesaf_rsesaf

ひっ……
2018/01/11 13:56
私は振り返って逃げようとしたが、後ろから口を塞がれ、手を引っ張られ、部屋に引きづりこまれた。

そして、鼻に刺激臭を感じたところで私の意識は途切れた。

2018/01/11 14:06

rsesaf_rsesaf

*  *  *
2018/01/11 14:17

rsesaf_rsesaf

う……うーん……
2018/01/11 14:18
よかったー、なんともなくて
2018/01/11 14:21
きゃああ……
2018/01/11 14:24
シッー!
2018/01/11 14:28
怖がらせたのはごめん

でも、今は静かにして欲しい

2018/01/11 14:29
貴方は何者なの?
2018/01/11 14:33
にゃー!
2018/01/11 14:34
クロ?!でもクロは……
2018/01/11 14:36
さて、どこから説明したものか

……最初からかな、うん

  はじめに言っておくとね——僕は、ロボットなんだ

2018/01/11 14:40
ロボットってそんなの……信じられるわけが……
2018/01/11 14:45
これをみてもかな
2018/01/11 14:49
彼は自身の左目——眼球を抉りだした。


抉られた左目があった場所には歯車がまわっている。——カチカチカチ……カチカチカチ……あの音だ……

2018/01/11 14:51

rsesaf_rsesaf

僕はとある人に造られたロボットだ その人は僕を造った後、すぐに病気で亡くなってしまった

その人に人間と暮らせと言われてね、遺言だよ

その後、遺言通り行動して僕はこの街にたどり着いた

そして1年前、君のお母さんに出会ってね

彼女は1人でいた僕に優しくしてくれた 

だから僕は君のお母さんを助けた

そこまでは事実だ

そこからは僕の暗示の電波を使って居候させてくれるように誘導した お父さんも電話越しに携帯を通して暗示をかけた 君もちょっとおかしいと思っただろ

2018/01/11 15:03
クロはどうして、その……顔が……
2018/01/11 15:18
実は僕と会う前に君のお母さんが猫を拾っていたんだ……それがクロだよ

クロが道路に飛び出したからお母さんも一緒に飛び出して車に轢かれそうになった……お母さんはなんとか助けられたけど、クロは轢かれてしまってね 命を繋ぐには機械の身体にするしかなかった……そのメンテナンスをさっきしていたんだよ……僕がいなくてもいいようにね……この眼の歯車は真ん中が顕微鏡のように扱えるから便利なんだ

2018/01/11 15:26
そういえば、クロのあの姿をみたとき、血は全く出ていなかった。肉がみえていたけれど。
2018/01/11 15:36

rsesaf_rsesaf

実は他にも暗示で誤魔化してることがあるんだ……一度、疑いを持った君ならもう気づくと思うよ
2018/01/11 15:42
他にも……?
2018/01/11 16:10
私は思考する。……そして、すぐに思い至った。
2018/01/11 16:12

rsesaf_rsesaf

貴方と一緒に食事をした記憶がない……お風呂に入っているところもみたことがない……ロボットだから……? そして、なにより——
2018/01/11 16:17
貴方の名前を知らない——
2018/01/11 16:19
当たりだ
2018/01/11 16:20
でも、どうして? 貴方なら名前を名乗っても暗示があるから……
2018/01/11 16:32
最初は適当な偽名で通そうと思ったんだけど、名前を知らせなければ、名前を知らせないことで一線を引けば、離れるときに辛くなくて、決心が付きやすいと思ったからかな

おかしいよね、ロボットなのに 君のお母さんと最初に会ったときに優しさを知ったからかな それとも嘘をつくのに、もう疲れたからかな、それに僕はもう……うっ……


2018/01/11 16:37
彼は突然、よろめいて倒れそうになった。 私は咄嗟に彼を支えた。
2018/01/11 16:46

rsesaf_rsesaf

どうしたの?!
2018/01/11 16:52
ああ——長居し過ぎたみたいだ……この生活が気に入っていたんだな

僕を造った人が死んだ今、僕が活動するためのエネルギーを用意できる人はいない……

要は燃料切れさ 僕を造ったあの人は短い時間でもせめて、楽しんで欲しいって思ったんだろう

生活を続ける時間が長くなればなるほど、人間のことがわかってきて、嘘をついている自分のことがどうしようもなく苦しくなっていった 

本当はもっと前にここから出ていくつもりだったんだ…… 誰にも迷惑をかけずに海中とかで活動を停止——死のうと思った

嘘をついていた僕にはお似合いの終わりさ

けど、それでも、嘘ついていたっていうのに、苦しいと思っていたはずなのに、この家の皆との生活が楽しくて、どうしても決心がつかなかった…… 

本心を話さずに、誰にも本当の自分を知られることなく死ぬのが嫌だった……


2018/01/11 16:57
人間ですら、嘘をつくことはあります……!だから、そんな悲しい事を言わないでください!
2018/01/11 17:42
お母さんに良く似た優しい子だ……

ああ、でももうこれでお別れだ……


2018/01/11 17:50
待ってください! 貴方の名前は?
2018/01/11 17:57
夢人(ムジン)……
2018/01/11 17:58
夢人さん、必ず、必ずもう一度会えます、お母さんにもまだ謝ってない! 必ず私が……貴方を目覚めさせます!
2018/01/11 18:04
彼と最初に会ったときは、怖かったけれど、機械のことでわからないことはすぐ教えてくれた。兄が出来たようだと私も内心、慕っていたのだ。

暗示が解けた今だからわかる。 初めが嘘だったとしてもあの優しさは本物だった。

だから、立派な家族だった。たった1年でも……

2018/01/11 18:08

rsesaf_rsesaf

ありがとう……そして嘘をついてごめん……


2018/01/11 18:31
彼はそういって膝から崩れ落ちた。 私は彼の体重を支えきれなかったが、なんとか彼を仰向けの体勢にした。

必ず、もう一度、謝ってもらうんだ。これで、終わりは嫌だ。

2018/01/11 18:33

rsesaf_rsesaf

*   *   *
2018/01/11 18:37

rsesaf_rsesaf

エネルギーMAX……起動します……
2018/01/11 18:37

rsesaf_rsesaf

ようやくここまでこれた……
2018/01/11 18:39
あれから10年の月日が経った。私は大学に残り、研究を続けた。 未知のエネルギー研究という名目で。

それでも彼の体に残っていたエネルギーの残滓からエネルギーを再現するのに10年の時間がかかってしまった。 

2018/01/11 18:41

rsesaf_rsesaf

 
2018/01/11 18:46
 
2018/01/11 18:49
母は静かに見守っていた。いつもはよく鳴くクロですら、静かだった。

母はあの日の朝、暗示が解けてからずっと泣いていた。今日までずっとだ。皆がいないところで。

2018/01/11 18:50

rsesaf_rsesaf

そして、起動して数分ののち、彼の目が開いた。 彼は私達の姿をみつけると、申し訳なさそうに。
2018/01/11 18:55

rsesaf_rsesaf

ごめ——
2018/01/11 19:03
こういうときは……そうじゃないでしょ?
2018/01/11 19:03
母が優しい声でそう告げる。

彼は一瞬驚いたがすぐに微笑んでこう言った。

2018/01/11 19:04

rsesaf_rsesaf

ただいま
2018/01/11 19:06
私達は答える。
2018/01/11 19:07

rsesaf_rsesaf

おかえりなさい、夢人
2018/01/11 19:09

rsesaf_rsesaf

おしまい。
2018/01/11 19:09

rsesaf_rsesaf

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