もしも敬虔な女子高生が〈神は死んだ〉のニーチェ作『ツァラトゥストラ』を読んだなら

『突撃ラブ&ハート』

エピソードの総文字数=1,861文字

 そのうちに日が暮れ、ツァラトゥストラと死体を残して誰もいなくなった広場に夜がやってくる。

 ツァラトゥストラは死んだ男のそばに座り、長い間物思いにふけっていた。

「じっさい、けっこうな釣りだったな、きょうのツァラトゥストラは! 人間はひとりも釣れなかった。死体はひとつ捕まえたが。


 不気味なものだ、人間の命は。あいかわらず意味もない。道化師に命を奪われることもある。」

「ツァラちゃん、釣りをしてるつもりでしたの?」

  \(⌒-⌒)

   (・(ェ,,)・ ) < そんなエサで俺様がクマー!!

    `つ   `つ      (´⌒(´

     ゝ_つ_`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡

              (´⌒(´⌒;;

      ズザザザ

「おいおい、縦書きだったらどうするんだ。流石にAA《アスキーアート》は禁止だろう」
「えー」
「ひとみ君は日頃、俗世に染まり過ぎといわれていないか?」
「あ、たまに言われたりしますねー」
「まったくもう」
「人間たちに存在の意味を教えてやろう。それは、超人ということだ。人間という黒い雲からひらめく稲妻のことだ。」
「存在の意味。前にもこんなキーワードありましたわよね。それが超人なのですね」
「人間は黒い雲で、そこからひらめく稲妻……あ、かみなりって雲から落ちてくるんですよね。それが没落ってこと?」
「地上と雲の電位差によっては逆に登る雷もあるらしいが、ここではその理解でよさそうだな。黒い雲という停滞した普通の状態から飛び出す稲妻と、普通人から特出する超人をかけているのだろう」
「だが俺はまだ人間たちとは距離がある。俺のセンスは連中のセンスに通じない。人間たちにとって俺は、道化と死体の、まだ中間だ。」
「さすがにセンスの違いはわかっていたみたいですわね」
「道化と死体の中間というのが謎だな。そのどちらかならばふつうの人間にも理解できるのに。ということだろうか」
「夜は暗い。ツァラトゥストラの道も暗い。相棒のお前は、冷たく硬直している! さあ、運んでいってやるか。俺の手で埋めてやろう」
「あー、もってっちゃいましたよ」
「まさか放置もできまい。ただ、現代では良い子は真似してはいけないだろうな」
「もしも死体をみつけてしまったら、現代人はどうしたらよろしいの?」
「現状保存して警察に電話だろう。救命救助活動以外では手を触れるのもよろしくないな」
「この時代に警察はなかったのかしら?」
「それに相当する者はいたはずだが、ツァラ殿の行動はそうした連中は認めないだろうなあ。この本に国家権力が出てきたら、まず確実にツァラ殿は拘束されるか罰せられてしまいそうだ」
「ですよねえ……」
「キリスト教にも、権力にも反発しているかんじですわよね」
「反発……。

 あっ、そうか! わかった!」

「またか、なにがわかったんだ?」
「ロック、ロックですよ!」
「ロック?」
「ツァラさんの生き方って、ロックな生き方なんです! ロックンロール・ヒーローなんですよ!!」
「ロックなアイドル?」

「そうです!

 山にこもって思想(ライム)を練って、良いフレーズが浮かんだらそれを広めるために下界に降りて、広場をみつけたら演奏(ライブ)して、死体を見つけたら拾って埋めてやるんです!」

「最後のはちょっとどうかと思うが……、なるほど、言い得て妙かもしれない」

「なんだかだんだんわかってきました、ツァラさんってきっと、人が争ってるところに出くわしたら、

『戦争なんてくだらねぇぜ! 俺の歌を聞け!!』って言って仲裁する人なんですよ!」

「それって仲裁になっていないのではないか? 自己主張しているだけで……」
「平和になればそれで良いんです!」
「歌の力で平和を作るんですのね!」
「すべての心にラブ&ハートですよっ!!」
「またわけのわからないことを……。

 そもそもロックについて、なにかたいへん誤解しているような気がするなあ……」

「すてき! ラブ・サウンド・フォースの結成です!!


 ♪Let's Go つーきぬけょ…(フガガガ)」

ただでさえ引用ばかりなのに、歌詞まで引用したら別の問題が発生してしまう……。


腕をふりふり、なにかの歌を歌いだしたひとみの口を慌てて手で抑え込み、話題を変えようとする栞理であった。
「れいか、ページをめくってくれ。とりあえず先に進むんだ……」
「はあい♪」


(わたくしは歌も好きなんですけどね~)

〈つづく〉


※ひとみの歌の元ネタがわからない良い子の諸君は、本話のタイトルで検索してみよう!

 ヒントは『俺の歌を聞け!』だ!

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